最近よく、最低時給1500円を突破させる議論が出てきている。自民党も20年代に最低時給の1500円を達成させると宣言した。
自民党だけでなく、今ようやく日本の最低賃金(2023年10月時点で時給1,004円)を1500円にしようと各党の競争が始まっている。
今回は中小企業にとって大問題ように思われるので、この問題について取り上げたい。
実はこの問題、うまくやれば労働者も雇用主もウインウインの関係になる。
まずは、現状を見て見よう。
アメリカは州により最低賃金に開きがあるので、オーストラリアの最低賃金を参考とする。
オーストラリアの最低賃金は、2024年7月1日時点で時給24.10豪ドル(約2,458円)です。これは、日本の約2倍に相当する。
日本の税金、社会保障の現状
①パート社員本人の税負担
103万円を超えると基礎控除以外に所得控除がなければ超えた額に対して所得税がかかる。例えば、年収120万円なら、超えた17万円に対して所得税の税率5%を掛けた8,500円が所得税となる。
②親の税負担
103万円超で、学生やフリーターの親の税金が増える
仮に、扶養者の所得税の税率が10%なら、単純計算で63,000円、住民税は税率一律で10%なので45,000円と、合計108,000円の税負担が増えることになる。
③配偶者控除がなくなる
パート主婦・主夫の配偶者の扶養控除は、2018年の税制改正により、103万円の壁ではなく、配偶者特別控除の満額が適用される年収150万円が税制上のボーダーラインになる。
④社会保険料の増加
106万円:主婦フリーターの社会保険の壁
学生ではない社会人である主婦(夫)やフリーターが関係する。1社で約106万円を定期的に超える働き方をすると勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が発生する。配偶者や親などの会社の扶養に入っている人は扶養から外れることになる。
社会保険料は個人のみならず、会社も負担しなければならず、事実上、106万円も大きな壁となっている。
今回の選挙では第50回衆議院議員総選挙の結果、国民民主党は、選挙前7議席から28議席と4倍増となった。流れが変わった転換点である。
国民民主党は「手取りを増やす」ことを愚直に訴え続けた。特に、手取りを増やす政策の一環として、基礎控除等を103万円から178万円に引き上げることを訴えた。
公明党からも、「わが党もかねてより『103万円の壁』をはじめとするさまざまな『年収の壁』には強い関心を持っているので、ぜひ国民民主党と連携して、壁の突破について前向きに検討していきたい」と現時点でコメントを行っている。
具体的に178万円に引き上げるのか、もっと小さな金額に落ち着くのかは現時点ではわからないが、控除額の増加により1500円の時給は意外と早くやってくるとおもわれる。1500円はコストアップで大変だと思うのでなく、時給アップして優秀な人材を他社に先駆けて採用し、控除拡大により粗利を更に稼ぐ。
チャンスの到来といえるのではないだろうか。